解析手法を複数回に分けて記載する
解析の流れ
従来のオーソドックスな方法を記載すると以下になる
今回はサンプルデータを使用し、プリプロセスのエポックリジェクションを実施するまでを記載する
参考資料
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Complete neural signal processing and analysis: Zero to hero | Udemy
- EEGLAB - Information for Japanese users
使用するツール
サンプルデータの内容
- 実験参加者数:4人
- 実験実施内容:オドボール課題
(頻度高の標準刺激と頻度低の標的刺激をランダムに呈示し、標的刺激に向けられる反応を見るための課題) - 刺激呈示頻度:標準刺激(以降Sとする)120回につき、標的刺激(以降Tとする)30回、モニターに表示
- 刺激呈示後アクション:ボタンを、Sであれば中指、Tであれば人差し指で押す
- イベントマーカー:SはS3、TはS2、ボタン押し反応はS4として、イベント情報が潜時(呈示された時刻)に記録
- 刺激呈示時間:刺激呈示時間が200ms、その後1800ms(2秒間の呈示サイクルが繰り返される)
- 電極数:32 (32極目は眼電モニタリング用に左目尻付近に設置)
- 基準電極:Cz (電位差を取得するための基準とする電極)
- 収録時サンプリング周波数:200Hz
- 収録時フィルタ:0.016Hzハイパスフィルタ
プリプロセス概要
個人レベル解析の場合
- データインポート
- ダウンサンプリング
- データのフィルタリング
- 電源ノイズの低減
- 電源情報の登録
- ノイズの多い電極の除外
- エポッキング
- エポックリジェクション
- 独立成分分析
- ダイポール推定
- 電極の再基準化
- 条件付け
集団レベル解析の場合は後日記載
実施内容
- データインポート
サンプルデータをEEGLABにインポート - ダウンサンプリング
※PCにより計算量を抑える必要があれば実施 - データのフィルタリング
・データの周波数帯域を設定
今回はナイキスト周波数にする
・ハイパスフィルタを適用(1Hz)
発汗などによる1Hz以下の周波数での頭皮上電位分布の推移を除き、独立成分分析をうまく機能させるため - 電源ノイズの低減
・ローパスフィルタを設定(50Hz or 60Hz)
※シールドルーム外で実施する場合に設定することがあるが、最近だと独立成分分析を利用して除去するケースもある
・CleanLineなどのツールで低減する
商用電源のノイズ波形に対して当てはまりの良いサイン波を推定して差分
※実際にはローパスフィルタを設定しない場合に使用 - 電源情報の登録
・頭部モデルの設定
頭部モデルとは、信号源を与えた際に頭皮上で電位がどう伝播するのか、その仕方を決定するモデルであり、主にEEGLABでは3種類選択可能
・BESA
4層(頭皮、頭蓋骨、脳脊髄液、脳実質)の球体で構成されてる
・MNI
メッシュで構成されてるMotreal Neurological Instituteモデル、解剖学的妥当性が高い
・spherical
眼電をモニタリングする電極を含めた球体
今回はMNIを選択
・電極情報の読み込み
今回はサンプルデータに事前に電極情報が登録されている。
電極装着時、電極の実際の空間位置を計測してた場合は、そのデータを使うが、そうでない場合は電極名に従って10-5法にて定義されている電極の位置情報を設定する。なお電極の命名方法が10-5法に準拠していれば、EEGLABが自動的に実施する(実際によく使われるのは10/20法)
- ノイズの多い電極の除外
今回のサンプルデータで実施する必要はないが、後続の信号源推定、独立成分分析等で結果に影響を及ぼすため、判明した段階で除去することが望ましい - エポッキング
刺激呈示前何秒から刺激呈示後何秒までといった時間窓をエポックという。
条件ごとにエポックを揃え治すことで、事象関連電位(ERP)の条件間比較が容易になる。今回はS2、S3を対象としてエポックを生成するようにする
ここまで準備することで
↓のように参照できるようになる
- エポックリジェクション
ノイズを含むエポックを削除する。総エポック数のなるべく10%におさめるのが理想。最悪30%以内。
リジェクトの指針としては「急峻かつ過大」「空間分布が異常(単一電極に限られる、逆に過度に全体的)」の、両方にあてはまるもの。これらは生体電気活動以外に由来する電位変化と考えられるため。筋電や眼球運動などは「急峻かつ過大」に該当するが、空間分布としては異常性は無いので、独立成分分析で分離可能なので、ここでリジェクトすべきではない。
:例
↑この各電極のデータをまず縦軸に1つにまとめる
↑まとめる前と見比べてみると、Fp1、Fp2の眼球付近の電極が反応してることがわかる。
ただしこれを、全試行データをもとに標準化すると、↓こうなる
Fp1, Fp2付近に現れていた電位差が少なくなった、これは、全試行に満遍なく表れていることを示していて、全体的に見ると特に異質ではないといえる。よってこの段階でリジェクトするべきではない。
統計を用いた方法は別の機会に記載。
次回、独立成分分析以降を記載。